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名古屋高等裁判所 昭和25年(う)471号 判決

被告人

森昭伍

主文

原判決中判示第一の各窃盜罪に関する部分を破棄し、本件を名古屋地方裁判所に差戻す。

前記部分以外に対する本件控訴は之を棄却する。

当審に於て生じた訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

先づ職権を以て調査するに原判決は(一)昭和二十四年十二月五日附起訴状、(二)同月十二日附追起訴状、(三)同月二十三日附追起訴状の各公訴事実につき裁判をしたものであることは明白である。ところが原審公判調書の記載によれば公判の審理に於て檢察官が右(一)(二)の起訴状並に追起訴状を朗読した旨の記載はあるが、(三)の追起訴状については之を朗読した旨の記載がない。從つて原審公判に於ては右(三)の追起訴状記載の公訴事実に関する限り刑事訴訟法第二九一第一項所定の手読が履践せられなかつたと看る外ない。元來公判手読に於て檢察官がまず起訴状を朗読しなければならない事は、刑事訴訟法が口頭弁論主義を採り判決は原則的に口頭弁論に基いてなされることを要することよりして、絶対必須の要件といわねばならない。ところで本件に於て原判示第一掲記の事実は右(三)の追起訴状に記載された公訴事実に該当することが明らかであるから原判決中判示第一の各窃盜罪に関する部分は到底破棄を免れない。

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